ホウヒ

最近肉類を避け根菜類ばかり摂っていたせいか、腹にガスが溜まる。
電車の中でもガスを出したくなった。
幸い人が少なく、音を立てずに放屁すればき気付かれそうにない。
放屁の時に音が鳴るのは、肛門部の肉が振動するためである。
口でプーと音を鳴らすのと同じ原理だ。だから肛門を広げてガスが通り易くしてやれば音は鳴らない。
座席に座りながら右側の臀部を持ち上げ、押付けられた左側の臀部を外側に開き、肛門を開いてガスを放出した。するとスーっと微かな音とともにガスを放出出来た。
周りは誰も気付いていない。
電車の車両は連結部の扉が殆ど開放されているため、電車が動き出すと慣性の法則にしたがって風が起きる。電車が動いても内部の空気はリアルタイムに動かないので、空気は取り残され、あたかも車内では風のようになるのである。その風のおかげで放出したガスがその場に留まることもなく、匂いの問題も解消された。
一度放屁したものの腹の張りは収まらない。先ほど放屁に成功したので、調子に乗り再び放屁した。
すると次から次へと屁が出る。幾ら出しても出る。しかも段々勢いを増してきた。
一度に出る量も勢いも尋常ではなくなり、遂には放屁した勢いで身体が少し浮いた。
これはまずいと思い、気付かれないように席を立ったのだが、これがいけなかった。
立った瞬間にさらに強力な屁が出で、身体が前に進んだ。しかし屁は止まらない。
どんどん強烈な屁が出て、その度に身体を前へ前へと推し進め、遂には先頭車両の運転席のところまできた。壁に押付けられても屁は威力を増す一方で、その勢いで電車のスピードも加速しだした。運転手がブレーキを掛けても放屁の勢いには勝てず、深いな金属音を立てながらも電車は加速し、車輪とレールからは火花が出て、やがて車両を燃やしだした。その炎が車内にまで達し、屁に引火して車両は大爆発し炎上。
爆発に私の身体は吹き飛ばされながらも放屁はやまず、爆発の炎が尻に引火し、ロケットのようにどんどん上昇して行く。
やがて大気圏を突き抜け人工衛星の軌道上にまで達してようやく放屁が収まり、私は星に成りましたとさ。放屁星。