怪奇現象

土曜日、雨が降っていたので傘を差して歩いていた。
風向きの定まらない突風がしばしば吹き、ついに傘が壊れた。
骨の折れた傘をさして歩いていると、依然、突風に傘を煽られる。他の人もさぞかし苦労しているだろうと、辺りを見回したが平気な顔であるいている。
何故?ずっと車道の向こう側にいる人を見ながら歩いていたが、私は風に煽られるのにその人は一向に風に煽られない。僅か数メートル離れただけで風が違うのかと思い、前を見るとこちらに向かって歩いてくる人がいる。その人を観察していたが、私が風に煽られてもなんともない。
世の中に私にだけしか吹かない逆風があるのか?
すっかり投げやりになってしまい、風が吹いたときにわざと傘がもっと壊れるように、風をはらませて激しく振ったが、えてしてそういう時には壊れない。
もうどうせこの傘は使えないと思い、怒りに任せ柄の部分を踏んで、本体ごと曲げてやった。