ピンボール

電車でよっぱらった若い男がつり革に掴まりぐるぐる揺れていた。
電車がゆれるたびに、右へ左へと揺られ、いつ倒れるのだろうと見ていると、ついに掴まっていた手が離れ、床に倒れた。
床に倒れた男は芋虫のようにゴロゴロ転がり始めた。
電車が駅に近づき減速すると、男はゴロゴロを自分でコントロールできなくなり、進行方向に転がって行った。転がって行った先に、足を投げ出している人がいて、人が転がってきてぶつかった事に腹を立て、若い男が転がってきた方向に蹴り返した。蹴り返された男は勢いよく弾き飛ばされ、網棚にすぽっり納まった。納まったところへ電車が停車し、その勢いで網棚から落ち、降りる乗客に蹴飛ばされて車外にはじき飛ばされた。まるでピンボールだった。