釣堀

電車の中から外を眺めていると、釣堀があった。
平日の昼間から結構な人が吊をやっている。中年の男性が多かったが、中には若いカップルも見受けられる。
そのカップルの内の一組。男が一生懸命釣りそしている横で、女はつまらなそうにしている。
男はなかなか釣れずに苛立ちはじめ、釣堀だと言うのに、ルアーフィッシングのように竿を振り始めた。
すると後ろの男性に針が引っかかり、そのまま竿を振ったため男性は釣堀に飛ばされてしまった。

慌てた男はすぐに竿を上げた。しかし糸の先には男性の姿はなかった。
横で見ていた女は手を叩いて大爆笑。男も釣れないストレスが解消されたのか、次々に他の客を引掛けては釣堀に投げ込み始めた。
やがて全ての客を釣堀に投げ込んだ男はそれでも飽き足らず、一緒に居た女も引掛けて、釣堀に投げ込んだ。

もう投げ込むものがなくなり、男がどうするのかと思っていると、釣堀を管理している事務所の建物を引掛けた。そして、次には釣堀の傍を走っている電車、近隣のビルを次々引掛けては釣堀に投げ込み、狂ったように笑っている。
と言うような光景は、電車があっと言う間に通り過ぎたために見ることはできなかった。