三割

ある補欠の選手が夜中に素振りをしていた。
監督がそれを見つけて言った。
「何をしているんだ?」
「あ、監督、レギュラーを目指して練習していました」
「だから、それは何をしているんだと訊いているんだ」
「いえ、だから、レギュラーを取るために素振りをしていたんです」
「ふん、素振りか。レギュラーのやつらもみんなやってるな」
「だったら、僕はその倍の素振りをします」
「やめろ、素振りなんか。みんな、そんな『空振り』の練習なんかするから、せいぜい三割しか打てないんだ」