強風

電車を降りると雨が降り出していた。
天気予報では50%。振るだろうとは思っていたが、出かけるときに少し陽が差していたのに騙された。手荷物になることも鬱陶しくて傘を持たずに家を出たのが運の尽き。
あわてて駅前の薬局で傘を買った。薬局で傘を買ったといっても、「薬局」と言う名の傘屋でもなければ、「傘」と言う名の薬でもない。
薬局と名乗り傘を売ろうが、八百屋と名乗りパソコンを売ろうが自由なのだし、便利なのだが、紛らわしい。
392円も出して傘を購入し、
「ああ、これで俺は雨に濡れなくて済む。という事は、雨に濡れない訳だから、帰宅してから濡れた髪を拭いたり、濡れて脱げにくくなった衣服を苛立ちや後悔がない混ぜになった感情で脱がなくていいのだ」
と安堵したのもつかの間、折からの強風に煽られて傘が本来に向きとは逆に開き、あまつさえ傘の骨の二本も折れてしまった。折からの強風で折れた。
買ったばかりで折れた。折れた。オレタ。俺の心も・・・。
しばしの放心。

泣き喚き叫び嗚咽慟哭しつつ疾駆したのであった。
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