袋と戦う女

黄色い袋だった。袋の側面には店名とはまったく何の関連もないペンギンが笑っている絵が描かれている。店のキャッチコピーとも何の関連もない。
その袋が手も触れていないのに、時折「カサッ」と音を立てる。
不規則な袋の音は女の神経を逆撫でした。いい加減に止めておけばいいものを、懲りずに「カサッ、カサッ」
ついに女は袋に警告した。
「なんなの?何か言いたいことでもあるの?」
依然袋は押し黙ったまま、煙草一本を吸える位の間隔を空けて「カサッ」と女を挑発する。
女は実力行使に出た。

袋を掴み上げくしゃくしゃに丸め、ねじり、引っ張った。
袋は不適に笑いながらされるがままに身を任せていた。
何の抵抗もしない余裕たっぷりの袋の態度に、女の怒りは増幅した。
もう一度袋を広げ振り回した。
空気を一杯にはらんだ袋は、身体が裂け袋の用を成さなくなった。
女は勝利を確信した。
袋をゴミ袋に捨て、意気揚揚とその場を離れた女の耳に「カサッ」
くしゃくしゃになったペンギンが笑っていた。