公園

50歳前後と思われる女性が公園にいた。
公団住宅に併設された児童公園で、各種の遊具がある。
女性は一人でブランコに揺られていて、最初は何か生活に疲れているのかと思っていると、やおらブランコに立ち上がり、徐々に揺れが大きくなってきた。女性はやがて髪を振り乱し、鬼気迫る勢いでブランコをこぎ、そのふり幅は90度にまで達した。あまりの勢いにブランコから投げ出され、着地したのは砂場だった。
砂煙を上げ姿が見えなくなったが、しばらくすると砂の中から女性が起き上がった。「あはは、あはは」と声を上げて笑いながら、こんどはジャングルジムへと走っていく。
ジャングルジムによじ登り、鉄格子の間をくぐろうとしたが腰がつかえていた。抜けなくなりもがいている間も「あはは、あはは」と笑っている。なんとかジャングルジムを脱出すると今度は鉄棒へ。しかし鉄棒では逆上がりができないらしく、何度か試したもののすぐにまた別の遊具へ移動した。
白昼誰もいない公園で中年の女性が「あはは、あはは」と笑いながら凄まじい勢いで遊ぶ姿には恐怖を感じる。
見てはいけないものを見たような気になり、その場を立ち去ろうとした瞬間女性は「公園デビュー」と叫んだ。秋風が吹きぬけた。