恐怖

1

ジェットコースターに乗った。どうやって座っているのか判らないが、前の座席にオヤジが後ろ向きに乗っている。つまり私と向かい合っているのだ。
ジェットコースターは走り始め、一番高い地点に辿りつくと、一気に加速した。オヤジは相変わらずこちらを見ながら、ジェットコースターの動きにあわせ、右へ左へ飛ばされそうになっている。
「キャー、キャー」と女性客が叫ぶ中、風で髪型が乱れたオヤジは「おい、こんなところで遊んでいていいのか?いい大人が、こんな乗り物でギャーギャー騒いで。他にすることがあるだろう!」とネチネチ言ってきた。
「説教マシーン…」
オヤジに「その言葉、貴方にそのままお返しします」と言って、私はジェットコースターを降りた。

2

少々腹がたっていたので、気持ちを落ち着けるべく、観覧車に乗った。
時計で言えば九時のあたりに差し掛かったところで、窓の外に、先ほどのオヤジの顔が逆さまになって現れた。オヤジは何事かわめいていたが、声は聞こえない。このオヤジは私にしか見えないのかと思い、外を見てみると、こちらを指差し大騒ぎになっている。
このまま下まで行って降りると、オッサンは勿論捕まるだろう。しかし、私も何らかの形で巻き込まれるに違いない。まったく知らないオッサンとの関係を根掘り葉掘り訊かれるのも鬱陶しい。
どうしたものかと考えているうちに、オッサンの顔が徐々に下がってきて、真っ赤になったオッサンの顔がふと消えた。明らかに落ちた。
ゴンドラが下に着いた時には、救急車が来てオッサンが運ばれるところであった。私は当然警察の事情聴取を受けることになった。
オッサンは一命を取り留め、私は無関係であることも証明されたので、事件は終わった。

3

半年ほどして、友人に誘われまた遊園地に行った。
気乗りはしなかったが、お化け屋敷に入った。
こう言ったホラー系のものはまったく平気なので、何事もなくそろそろ出口に差し掛かったころだった。お化けの扮装をしたアルバイトの兄ちゃんが直立不動でうなだれている。その前にはあのオッサンが…。説教していた。

書いてるうちに何の話かわからなくなってきた。